ドッグフードと犬種図鑑 - dogplus.me
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図鑑

スパニッシュ・ウォーター・ドッグ

くりくり巻き毛の、水遊びが大好きな中型犬。
牧羊犬・猟犬・漁の手伝いなんでもする自然児

牧羊犬・牧畜犬チーム
牧羊犬・牧畜犬チーム

コリーやシェパードなどの牧羊犬と、ロットワイラーやコーギーなどの牧畜犬。人間の大事な財産である羊や牛の群れを管理するために、なくてはならない存在だった。よく気がつき、油断ない、賢くタフな働き者。

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鳥猟犬(ガンドッグ)チーム
鳥猟犬(ガンドッグ)チーム

カモやキジといった、鳥をターゲットにした猟の片腕となる犬を「ガンドッグ」という。人間がガン(鉄砲)で撃つ猟をサポートする役割なので、攻撃性は低く、人間との共同作業が大好き。

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英名
Spanish Waterdog
原産国名
Perro de agua español
FCIグルーピング
8G レトリーバーほか
8G レトリーバーほか

7G(7グループ)以外の鳥猟犬が該当するこのグループには、レトリーバーやフラッシング・ドッグ、ウォーター・ドッグがいます。

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FCI-No.
336
サイズ
シルエット
シルエットについて

身長160cmの人と、FCI犬種スタンダードに掲載されている体高(最高値)のオス犬を表示しました。体高の記載のない犬種は、体重等からみたバランスのよいサイズにしています。ただ同じ犬種でも、体重、性、毛量などにより個体差があります。

原産国
特徴
  • 中型犬
    中型犬

    体重10〜25kgくらいの犬。10kgを超えると、抱っこでの移動はけっこう厳しい。キャリーバッグやバリケンの重量が加わると、さらに重くなる。約15kgを超えると、人力での移動はほぼ困難。自家用車がある方がよい。 

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  • 巻き毛種
    巻き毛種

    カーリーヘアともいい、プードルが代表的。人間の頭髪と同様に、カットしなければずっと伸び続ける。抜け毛が少なく、掃除は簡単。そのかわり月に1回トリミング代がかかる。毛玉になりやすく、毎日ブラシが必要。

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  • 自家用車必要
    自家用車必要

    日本では、電車・バス・新幹線などの公共交通機関に大きな犬は乗車できない。動物病院の通院時や帰省、アウトドア遊びなど、歩いて行ける範囲を超える外出のときには、自家用車が必要となるサイズ。

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  • 子供との同居○
    子供との同居○

    性格的に子供に対して寛容で、多少のことは大目に見てくれる優しいタイプ。子守りをしたがるほど子供が大好きな犬もいる。ただ、犬に悪気はなくても体当たりするだけで子供が転ぶ可能性はあるので、親の監督は必要。

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  • 準トリミング犬種
    準トリミング犬種

    正式にはトリミング犬種ではないので、自宅でシャンプーやカットをしてもよいが、長毛種などで、手入れしやすいサマーカットにするためなどの理由で、実際はトリマーにお願いしている家庭も多い犬種。マルチーズやシーズーなど。

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  • 素直・従順
    素直・従順

    元来人間と共同作業をしていた犬種のため、人に素直に従うタイプ。人間にかまってもらうと嬉しく、トレーニングにも意欲的で、しつけも入りやすい。反面、依存心が高めなので分離不安(留守番が苦手)になりやすい傾向もある。

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  • おおらかな性格
    おおらかな性格

    犬種的に朗らか、おおらかなタイプ。環境適応能力や順応性が高いため、新しい環境や人にもたいして動じない。社会化トレーニングも順調に進みやすく、飼いやすいタイプ。ただし個体差、血統差はある。

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  • 遊び・イタズラ大好き
    遊び・イタズラ大好き

    好奇心旺盛で知的探求心が強く、すなわち賢い犬。でも頭を使う楽しみが満たされないと、ゴミ箱をひっくり返したり、物をかじったりなどの悪さをする。イタズラは好奇心の裏返し。脳を刺激する遊びを与えることが大事。

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  • 仕事大好き
    仕事大好き

    知的欲求・運動欲求の高い、仕事中毒な犬。無職な生活を強いられると、無駄吠え・咬み癖などの問題行動を起こしたり、神経症にすらなりかねない。知的な刺激&運動を存分に与えることができる飼い主限定。

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  • 小さいけど超活発
    小さいけど超活発

    小型でも爆発的な元気さがあり、運動量がたくさん必要な犬。近所を歩く程度の散歩では満足できず、無駄吠えやイタズラなどの問題行動を起こしがち。大型犬は飼えないが、長時間散歩やジョギングのお伴が欲しい人向き。

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  • 長距離歩き大好き
    長距離歩き大好き

    長時間全力疾走するタイプではないので、自転車引きなどの走る運動はさせなくてもよいが、持久力はあるので、長距離歩く運動は得意。自分の健康増進のためにも犬とたくさん歩きたいような、健脚な飼い主向き。

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スパニッシュ・ウォーター・ドッグ
スパニッシュ・ウォーター・ドッグ
スパニッシュ・ウォーター・ドッグ
スパニッシュ・ウォーター・ドッグ
スパニッシュ・ウォーター・ドッグ
スパニッシュ・ウォーター・ドッグ
スパニッシュ・ウォーター・ドッグ
スパニッシュ・ウォーター・ドッグ
スパニッシュ・ウォーター・ドッグ
スパニッシュ・ウォーター・ドッグ
スパニッシュ・ウォーター・ドッグ
スパニッシュ・ウォーター・ドッグ

歴史

スパニッシュ・ウォーター・ドッグ
ウォーター・ドッグの名前のとおり、水が好きな犬種。その特性を活かして隣国ポルトガルのポーチュギーズ・ウォーター・ドッグ(以下、PWD)と同じように、漁師の手伝いもしていたけれど、ちょっと意外なことにスパニッシュ・ウォーター・ドッグ(以下、SWD)の本業は、1000年以上も前からスペイン・アンダルシア地方の険しい山間部で、ヤギや羊を追う牧羊犬として働いていたという。もちろんいまも現役で活躍中。
さらには水鳥の狩猟のリトリーブ(回収)など、あらゆる風土に適応できる能力を活かして高地などで猟犬として使われた。そして現在ではその多才多芸な才能を買われて、探索や救助犬・爆発物の探知犬などとしても働いている。実にマルチな作業犬だ。

ただ、これほど古くから暮らしに役立っていた犬でありながら、FCIで正式に公認犬種となったのは1999年。ごく最近のことだ。そして日本に初上陸してJKCに登録されたのは2005年。2013年12月末現在、まだ日本で繁殖を手がけている人はいないようだ。よって国内でSWDの飼育を希望するならば、海外から個人輸入するしかない。
Perroは「犬」、 aguaは「水」、españolは「スペインの」。 Perro de agua español(ペロ・デ・アグア・エスパニョール)は、文字通り「スペインの水の犬」だ。
FCIのグループ分けでは、第8グループの「レトリーバー、フラッシング・ドッグ、ウォーター・ドッグ」に属している。つまりラブラドール・レトリーバー(レトリーバー)やイングリッシュ・スプリンガー・スパニエル(フラッシング・ドッグ)、アイリッシュ・ウォーター・スパニエル(ウォーター・スパニエル)、ポーチュギーズ・ウォーター・ドッグ(ウォーター・ドッグ)などと同じ仲間に分類されている。
ちなみに、FCIに登録されているウォーター・ドッグは以下の7犬種。みんな、くりくり巻き毛で泳ぐのが好きな、体高50cm前後の中型犬だ。それぞれが大昔になんらかの血縁関係にあっても不思議はない。ちなみにバルビーは、ヨーロッパのすべてのウォーター・ドッグの祖先であろうという説があり、またプードルとの親戚でもあるとされる。

・スパニッシュ・ウォーター・ドッグ(スペイン原産)
・バルビー<英名:フレンチ・ウォーター・ドッグ>(フランス原産)
・アイリッシュ・ウォーター・スパニエル(アイルランド原産)
・ラゴット・ロマニョーロ<英名:ロマーニャ・ウォータードッグ>(イタリア原産)
・ヴェッターフーン(オランダ原産)
・ポーチュギース・ウォーター・ドッグ(ポルトガル原産)
・アメリカン・ウォーター・スパニエル(アメリカ原産)

SWDは、古くからの犬種であるのは間違いないのだが、起源にはさまざまな説があり、正確なことは分かっていない。1つの説は、トルコの商人が家畜の群れとともに中近東を通って南イベリア半島に移動しながら連れてきたというもの。もう1つの説は、北アフリカを起源とするもの。ほかにもPWDと同様に、アジアが起源という説もある(トルコ商人同伴説のさらに前の話か?)。
ともあれ1110年の段階には、羊のような被毛をしたウーリーコートのウォーター・ドッグが存在し、それが各国のウォーター・ドッグの共通の先祖だとする文献も残っている。どれが本当なのか分からないが、とにかく1000年くらいの歴史がある犬であることは間違いないだろう。

さて本犬種は、水辺が得意そうな名前からはちょっと意外なのだが、前述のように最初は羊やヤギの家畜追い犬として使われていたという。そうなるとFCIの8グループの分類ではなく、仕事内容としてはウェルシュ・コーギー・ペンブロークやロットワイラーなどのキャトルドッグ(牧畜犬)と同じということになる。
18世紀ごろスペインの南部から北部に向けて、肥沃な牧草地を求めてSWDと家畜が北上した。SWDは、スペイン南部のアンダルシア地方(西はポルトガルと接し、南は地中海・ジブラルタル海峡・大西洋に面する。海峡を挟んですぐアフリカ・モロッコがある)が出身ということか。ちなみにPWDもポルトガル領の中ではいちばん南部の地方が出身。アンダルシア地方と隣接したアルガルヴェ地方に多かったとされるので、こういう立地条件からしても、SWDとPWDは血縁関係があったのではないかと推察できる。

18〜19世紀、産業革命がスペイン北部や中央部の首都マドリッド付近に影響を与える頃になると、イベリア半島にもジャーマン・シェパード・ドッグやベルジアン・シェパード・ドッグといったヨーロッパ中央の牧羊犬が入ってきて、SWDと取って代わられるようになった。そのためSWDは、ふたたび南部に戻っていく。セビーリャ、ヘレス、アルヘシラス、マラガといった南部の街の近くの小さめの山々で牧畜犬として働いたり、それらの街の近くの海岸部でボートを引っ張ったり、あるいは水鳥の回収作業のできる猟犬として働いた。
牧羊犬としての職を失った北部で残っていたSWDもまた、漁師の網を引く手伝いをするようになった。こうした歴史を紐解くと、SWDは、スペインの土地の犬として地域に根ざし、あるときは牧畜犬や牧羊犬、あるときは猟犬、あるときは漁師のお手伝いと、「なんでも屋さん」「便利屋さん」として働く有能な相棒だったことがわかる。

ちなみに、スペイン北部の漁師は、明るい色のSWDを好んだ。その方が水の中にいる姿を発見しやすかったから。そのため白、ベージュ、バイカラー(2色で構成される色。たとえば白地に黒ぶちなど)の犬がよく使われた。かたや牧畜犬として使う農場主は、茶系か黒といった暗い色の犬を好んだ。その方が牧草地で見つけやすかったからだとの記述がある。でもむしろ茶系や黒っぽい犬は、野山に溶け込む色であるので、猟犬として使うときにもよさそうだ。
ともあれ地域によって、仕事内容によって、被毛色の好みが分かれるという話は他犬種ではあまり聞かない。使用目的が違えば、便利な色も異なる。1犬種でいろいろな仕事を請け負うSWDならではの逸話だ。

スパニッシュ・ウォーター・ドッグ
このように1000年も前から、土地の犬として身近にいた犬であったが、国際的なデビューを果たしたのはごく最近。まず1980年頃にSWDが「アンダルシアの犬」としてスペインでのショーで出陳された。当時のジャッジ達は「いつも地元で見かける犬なのに、なぜどの犬種の本にも載っていないのだろう?」と不思議に思ったそうだ。それで本犬種の公認への動きが始まったという。
そして1985年、マドリッドで開かれたインターナショナルドッグショーにおいて、47頭のSWDが出陳された。でもすべての犬が(おそらく策定されたばかりの)犬種スタンダードに該当していたわけでなく、アルビノだったり、不適切な咬み合わせだったりしたため、40頭が登録されることとなった。ただそれからしばらくの間は暫定的に承認されていた犬種であり、すべての認証がおりてFCI(国際畜犬連盟)に正式に公認されたのは、(これも前述のとおり)1999年のことである。古い犬種でありながら、国際的に認められたのはごく最近ということだ。世界にはまだまだSWDのように、国際的に知られていない犬種が数多く存在するのだろう。
日本はFCI加盟国なので、JKCでも公認犬種であるが、今なおアメリカのAKCでは未公認犬種であるという。ただアメリカでは少数ながら犬舎は存在している。

日本には、2005年に2頭のSWDが上陸している。仕事で海外赴任していた個人の人が、愛犬として飼育していた2頭をアメリカから連れて帰っている。現時点(2013年12月末)では、JKC登録されているのはこの2頭だけのようだ。繁殖の予定はないそうなので、つまり日本では本犬種のブリーダーはいない。
日本でこの犬を飼育したいと思うのなら、海外から輸入するしかない。ただし、スペインで犬種スタンダードをつくったSWDのトップ・ブリーダーも、その意志をくむブリーダーたちも、この犬が商業的な流行犬種になることは望んでいないという。そのため外国には犬を出したがらない。地元の犬を根っから愛する心意気に守られた、希有な犬種だ。

外見

体高は、オス44〜50cm、メス40〜46cm。オスメスともに体高に見合ったバランスを保っていれば、最大2cmのオーバーサイズとアンダーサイズは認められる。日本によく見かける洋犬種にはなかなかない、大きくもなく小さくもない絶妙なサイズ。“体高”という話であれば,甲斐犬やウィペットくらいだと思うとイメージしやすい。
体重は、オス18〜22kg、メスは14〜18kg。モコモコの巻き毛が伸びてくると、羊のようにボリュームが出てきて大きく見えるが、刈ってしまうと子ヤギのようになる。隣国のPWDやプードルよりもかなり小ぶりである。ビション・フリーゼよりは大きい。
作業犬にしては小さい、コントロールしやすいサイズだが、多才多芸な中型犬なのでタフで頑健。そして泳ぎと潜りにおいて特別な能力とスタミナを持つ犬なので、がっしりしている。コンスタントに泳がせて、この美しい筋肉を維持することが大事。水辺があれば、勝手に水に飛び込むことだろう。たくましい野生児である。

スパニッシュ・ウォーター・ドッグ
体躯バランスは少々胴長で、足が短め。なかなかファニーな体型だ。泳ぐのに適していそう。指の間に水かきがあり、効率良く泳ぐことができるとも言われている。
そしてなんといっても特徴的なのは、モコモコ巻き毛。プードルやPWDのような飾り切りのできる柔らかいふわふわ巻き毛とは違い、SWDは癖のある強い巻き毛で、そのままにしているとコード(縄状の毛束)をつくり、ドレッドヘアのようになる。PWDは、カーリータイプとウェービータイプの2種類がいるが、SWDは完全なるカーリータイプのみ。コードを作るのがスタンダードだ。逆にコードができない毛はNGとされる。それくらい癖が強い巻き毛である。プーリーやベルガマスコといったドレッドヘアの犬を想像すると分かりやすいが、ただし厳密に言うと彼らとも少々毛質は異なるらしい。
いずれにせよ湿度の高い日本で室内飼育することを考えるならば、いささか臭いがしたり、落ち葉や砂埃をくっつけたままになったりするドレッドヘア状態は、キレイ好きの人には受け入れにくいかもしれない。
こうしたコード状の毛は、冬の海や湖の冷たい水や悪天候の気候にも耐えうる被毛。日々のメンテナンスは、ブラシをかけてはいけない。こよりのようにヨリヨリとしたコードの形成を妨げるからだ。これはものぐさな飼い主には案外朗報である。
でもそうはいっても毛玉はできるし、コード同士がからまってしまうことはよくある。指で裂くようにちぎったり、ハサミを使って、通気性を保つようにする。からまった毛玉たちが固まってしまったフェルト状態は、コード状態のドレッドヘアと同じではないので間違えないように。決してメンテナンス・フリーの犬というわけではない。

またプーリーと違い、SWDの場合は長くなりすぎた毛はスタンダード外となるので、定期的に丸刈りにする。毛量にもよるが、だいたい年に2回、全身をバリカンで刈る。まさに羊のようだ。丸刈りにすると体がふたまわり近く小さくなり、これまた変化が楽しい。
でも珍しい犬を丸刈りをするのは勇気がいるせいか、日本のトリマーには断られることが多いという。いま日本にいるSWDの飼い主は、自分で丸刈りにしている。だいたい1頭につき、刈るのに半日がかり。最初のうちはもっと時間がかかったという。経費はかからないが、けっこう重労働だ。スペインのトップ・ブリーダーだと慣れたもので1時間くらいで丸刈りできるらしいが、普通の人の場合、かなり大変だと思われる。
丸刈り後、毛がなくなりスッキリしたところでシャンプーする。体臭は少ない犬種なのでシャンプーは、丸刈り後の年2回程度という。あとは、日々の水遊びで汚れを落としているとのこと。シャンプーの回数は、飼い主や犬のライフスタイルによっても異なるだろう。ただし丸刈りしてない状態で洗うときは、ゴシゴシするとコードが絡むので、セーターを手洗いするときのように押し洗いをする感じで優しく洗うこと。
洗ったあとは、なるべくドライヤーを使わず自然乾燥させるというのもSWD流。しっかりブルブルさせる。でもちゃんと乾いてないとあとから臭うし、皮膚炎の原因になる可能性もあるので注意。からんでないコードがちゃんと維持できていれば、地肌が見え、通風性もある。そこが大事。
ちなみにプーリーなどはダブルコートなので分厚いヨリヨリドレッドヘアになるのだが、SWDはシングルコートなので、その点はプードルやPWDと同じ。抜け毛がほとんどなく、また皮脂量も少ないために体臭が強くならない。夏場ともなると、ヨダレや屋外のホコリや泥などの付着のせいか、いくらSWDとはいえ無臭ということはないが、皮膚が脂っぽい他犬種に比べると、体臭は少ない。

毎日のブラシをしなくてよい、シャンプー回数が少ない、トリミング代がかからない、という点では、ほかの巻き毛種に比べると手入れは楽といえる。抜け毛も少ないので、部屋の掃除機がけも楽だし、アレルギー体質でもどうしても犬と暮らしたいと夢見る人には希望の星である。とはいえ、年2回は、飼い主が丸刈りを自分で頑張らねばならないし、絡まったコードや毛を整える日々の手入れが必要ということは忘れずに。
耳の中の毛もボーボーに生えてくる。これはプードルやテリアにも似ている。日本は湿度が高いので、夏場は外耳炎になりやすいので要注意。毛の量には個体差があるが、約2か月ごとに耳の内側の毛を鉗子などでクルクルと巻いて抜き取る作業が必要。自分でできない場合は、トリマーか獣医師に相談する。
また屋外で遊ぶと、巻き毛の中に落ち葉や砂埃をつけて帰宅するため、部屋の中が砂っぽくなるという難点もある。原っぱや山で遊ばせると、草の実も大量にくっつけて戻ってくる。キレイ好きの人にはやはり向いていないかもしれない。
だけど、被毛が汚れるからアスファルトの上でしか歩かせない、濡れ犬は臭いから泳がせない、という人はSWDの飼い主失格である。スペインの野生児と暮らしたいなら、やはり大らかで楽天的な、陽気なラテン系の人が向いているといえるだろう。

毛色はかなり幅広く、いろいろな色合いが認められている。ソリッドカラー(単色)の場合は、ブラック、ホワイト、チェスナット、マロンなどさまざまな色調がOKだ。またバイカラー(2色)は、ホワイト&ブラック斑、ホワイト&ブラウン斑で、こちらも色調はさまざま。でも、トライカラーやブラック&タン、ヘーゼル&タンは許容されない。ただし、ダルメシアンのような白地に細かい黒いぶちはNGだ。また、3色のトライカラー、ブラック&タン(黒いドーベルマンのような色)、ヘーゼル&タン(茶色のドーベルマンのような色)は認められない。

毛色


なりやすい病気

遺伝性
  • データなし
先天性
  • データなし
その他
  • データなし

魅力的なところ

  • 働き者の芸達者。環境や飼い主の都合に合わせてよく働く。
  • 扱いやすいサイズとボリューム。
  • 個体にもよるが、基本物事に動じず環境適応力あり。
  • 泳ぐのが趣味。海や湖沼で遊ぶなら最高の犬。
  • 見た目は可愛いらしいが、身体的にも精神的にもタフで活発。体育会系の飼い主にぴったり。
  • 水陸両用。持久力抜群。アウトドアのお伴に最高。
  • トレーニング性能は高く、しつけの理解も早い。
  • アジリティなど、ドッグスポーツも得意。
  • 個性的な毛なみ。抜け毛が少ない。体臭も少ない。
  • 意外と毛の手入れは難しくない。
  • トリミング代もかからない。
  • 本来の性質ならば子供好き。サイズも手頃で、子供のよい相棒になる。

大変なところ

  • 活動的な中型作業犬。インドア派の飼い主には不向き。
  • 趣味は水泳や行水。水遊びをさせてくれない飼い主はNG。
  • 仕事好きなので、ヒマだとイタズラや無駄吠えをする可能性あり。
  • 自主性があり油断ならない性格なので、トレーニングにはコツがいるかも。
  • 特殊な毛のため汚れの吸着が多い。キレイ好き、神経質な飼い主には不向き。
  • 毛玉の手入れは必要。
  • 年2回ほど、自分でバリカンを使える人限定。
  • 外耳炎になりやすいので耳の毛抜きをこまめに行う必要あり。
  • 日本での入手は困難。
  • 日本では情報が少ない。同じ犬種を飼っている飼い主がいない。

まとめ

ほどよいサイズの働き者。動物アレルギーのある人にとって期待の星

強いくせっ毛の可愛い風貌。オス/メス平均して体重15〜20kgくらいの、扱いやすいサイズでありながら、犬らしい存在感を楽しめる絶妙なサイズ。なかなかこういう犬はいないので、貴重な存在といえる。そのうえ子供好きという寛容さ、トレーニング性能の高さ、体臭の少なさなどの点からも、家庭犬としての資質を多く備えた犬だ。
抜け毛が少ないので動物アレルギーを持つ人にも望まれる犬である。ただし、アレルギー・フリーと科学的に立証されているわけではないので、安易に迎えるのは好ましくない。

特徴的な強いくせっ毛。メンテナンスは簡単とも言えるが、苦労がないわけではない

スパニッシュ・ウォーター・ドッグ
通常、日本によくいる巻き毛の犬の代表選手といえば、ご存知プードル。そのほかビション・フリーゼや、SWDに近いPWDがいるが、彼らは飾り切りのできるホワホワのコシのない巻き毛である。毎日ブラッシングしてホワホワを保ち、毛玉を作らないように努力し、そして月に1度、けっこうな値段のトリミング代を捻出する必要がある。
それに比べてSWDは、「ノーブラシ」。ブラシをかけてはいけない犬種だ。ホワホワ巻き毛チームのような手間がかからない。さらに「ノートリミング」。飾り切りをしてはいけないので、トリマー費用もかからない。そういう点では、巻き毛種の中でも希有な犬種である。
そうはいっても、ヨリヨリしたコード状の毛同士が絡まったり、脇や耳のうしろなどこすれやすい部分はとくに毛玉になりやすい。そのままフェルト状になると、通風性が悪くなり、皮膚にダメージも与えかねない。フェルト状にならないよう、指で裂くように、メンテナンスする必要がある。

また毛量にもよるが、だいたい年2回ほど、伸び続ける毛を丸刈りにする。丸刈りにすると、羊のような犬が、いきなり子ヤギのようになり、別の犬のようでこれまた可愛らしい。そういう楽しみがある。
ただ日本では、普通のトリマーはSWDを見たことも触ったこともないので、お断りされるそうだ。となると、丸刈りは飼い主自身がやるしかない。お金はかからないが、労力と技術を要する。
日本にはほぼいない犬だけに、すべて独学でいろいろなことを頑張らねばならない。毛の手入れだけでなく、なりやすい病気のことや飼育管理方法含め、向学心のあるチャレンジャーでないと、この犬を幸せにすることは難しいだろう。

働き者の犬。運動欲求と知的欲求は高いので、欲求不満にさせないこと

スパニッシュ・ウォーター・ドッグ
SWDは、牧畜犬・牧羊犬、ガンドッグ、漁師の手伝い、災害救助犬、爆発物探知犬など、なんでも引き受けてしまう多才な「なんでも屋」。飼い主の要望に応えて、なんでもそつなくこなすということは、適応能力があり、賢く、人間のお役に立ちたいという作業意欲にあふれた犬である証しである。
でもそれは裏を返せば、こういう犬は、いつも仕事を欲しており、運動欲求が高く、知的好奇心・探求心に満ちているということであり、その欲求が満たされないと、自分で仕事を探したり運動したがったりして、人間から見ると面倒なアクティブさやイタズラ心を発揮することとなる。頭のいい犬は、よからぬこともすぐ覚える。運動好きな犬は、よく走りたがるし、泳ぎたがる。ヒマだとイタズラもする。ストレスが溜まると問題行動を起こす。

また自己判断のできるしっかり者ということは、別の言い方をすれば自我が強く、頑固な部分もあるということ。しっかり者のSWDは、ラブラドール・レトリーバーのように、なんでも素直に従順に応じるタイプとはちょっと違うようなので、トレーニングにはコツがいりそうだ。巻き毛だけでなく、性格もちょっとクセがあるように思える。とはいえ、テリアや日本犬などの頑固者ほどではないので、それほど飼育の難しい犬ではないはず。
ただし、とにかくアウトドアが大好きなアクティブな犬なので、運動管理や好奇心を満たす生活をきちんと与えられる人でないといけない。スペインのブリーダー宅には、SWDたちのための大きなプールが完備されている。そんな住宅環境が理想。
さすがに日本ではそれは無理だとしても、川や湖、海がそばにある環境だとよい。カヌーや波乗りなど水辺の遊びが趣味の飼い主なら、SWDにとって最高だろう。外見は可愛い犬だけど、中味は本格的なスポーティかつワーキングな犬であることを忘れないでほしい。泳げないSWDに育てるようなことはしないでほしい。ウォーター・ドッグの名が廃る。

もしも、今後日本に新しいSWDが入国することになっても、スペインで愛されている魂を忘れず、安易な流行犬にならずに、昔気質の健全な犬であってほしい。SWDに限らずすべての犬に言えることだが「レア犬種だから欲しい」という、そもそも犬を飼う資格のない人はお断りだ。

このページ情報は,2014/11/08時点のものです。

本犬種図鑑の疾病リストは、AKC Canine Health Foundation、Canine Cancer.com、Embrace Insurance “Pet Medical Conditions”などを筆頭に、複数の海外情報を参考にして作られています。情報元が海外であるため、日本の個体にだけ強く出ている疾患などは本リストに入っていない可能性があります。ご了承ください。

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