日本では「桜肉」と呼ばれ昔から食べられてきた馬肉は、家畜としての歴史も長い馬(奇蹄目ウマ科、学名:Equus ferus caballus)の肉である。馬は近年愛玩動物としての人気を高めつつも、世界的にはまだヨーロッパ諸国やイスラム教国などで食用にされている。しかし、馬を愛玩動物とする傾向が経済先進国に多いせいか、ヨーロッパや北米、オセアニア原産のドッグフードでは馬肉を原材料に用いた商品はほとんどなく、現在市販されている馬肉を使ったドッグフードは、そのほとんどの原産国は日本である。日本国内では熊本県と福島県が馬肉の産地として有名である一方で、2012年度には約5300トン(厚生省統計)の馬肉が輸入されており、輸出国は上位から順にカナダ、メキシコ、アルゼンチンである。若い馬の赤身は牛肉のように明るめの赤い色だが、成馬の赤身肉はやや黒みがかった色をしており、脂肪が黄色いのが特徴的である。馬肉は少し固めの食感で、馬の年齢に伴い固めになり、筋肉中に貯蓄されているグリコーゲンによって若干甘味がある。
一般に馬肉は「高タンパク」とのふれこみがあり、多くの人がそう思っていると思うが、栄養価で見るとタンパク質を約20%含むに過ぎず、鶏胸肉(約22ー24%)や豚ヒレ肉(約22%)、鹿肉(約22%)に比べてタンパク質量は低く、牛モモ赤身肉(約20%)と同じくらいである。しかし馬肉の色に見られるように、赤身肉に含まれる微量元素の鉄は他の肉に比べダントツに多く、牛肉の約2ー3倍、鶏胸肉の約10倍にあたる約4mg/100gを含む。馬肉に匹敵する鉄分量を含む肉は鴨肉(約4mg/100g)あるいは鹿肉(約3mg/100g)である。
また馬肉は、ほかの肉に比べアミノ酸のメチオニンを多く含むのが特徴的である。メチオニンは分子の中に硫黄元素を含むアミノ酸で、同じく硫黄元素を含むアミノ酸シスチンとともに毛を構成する大事なアミノ酸である。毛量の多い犬ほど必要とされる。
EUでは、食肉衛生の一環としてすべての馬は食肉用または非食肉用のいずれかであることを決め、個体識別書類(identification document、通称”パス”)に明記しなければならない。1)食肉用馬は愛玩用等に飼育されている非食肉用馬とは異なり、獣医療に使用される薬物に制限がされており、屠畜時には、馬がこれまで受けた獣医療がすべて記録されているパスが添えられ、食肉衛生検査を受ける。残留薬物等の管理のため非食肉用馬を後年になって食肉用に転向させることはできず、これにより食用馬肉の薬物汚染を防いでいる。
1)COMMISSION REGULATION (EC) No 504/2008
of 6 June 2008, implementing Council Directives 90/426/EEC and 90/427/EEC as regards methods for the identification of equidae.
http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:2008:149:0003:0032:EN:PDF


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