炭水化物や脂肪の代謝だけでなく、タンパク質の代謝にも大きく関わりを持つビオチンは、酵母やレバー、乳製品、糖蜜などに多く含まれるビタミンの仲間。かつてはビタミンB7やビタミンHとも呼ばれた。そのタンパク質代謝の中でもとくにケラチンの生合成に関与しており、ビオチンの不足は毛質や爪に影響する。健康な成犬のビオチン所要量は体重1kg当たり1日2μg(牛レバー約2gに相当)とされ、成長期の子犬や妊娠・授乳中の母犬ではその倍量が目安とされる。長期にわたり生卵(あるいは噴霧乾燥させた卵白)を摂取すると、卵白に含まれるアビジンが腸内でビオチンと結合して不溶性化合物となって吸収が妨げられ、ビオチン不足が顕著に表れる。加熱した卵白であればアビジンは不活性化し、問題はない。
ビオチンが不足するとまず毛質が悪くなり、パサついたり折れたり切れやすくなるほか、抜け毛や白髪が増え、フケが出やすくなるだけでなく、ケラチン合成が滞ることによる皮膚炎や皮膚の肥厚、痒み症状などが現れる。妊娠中の母犬でビオチンが不足すると、生まれてくる子犬に肺浮腫や開眼遅延などの影響が見られることが知られている。


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